ほぼ日刊イトイ新聞の本

ほぼ日刊イトイ新聞の本 (講談社文庫)

ほぼ日刊イトイ新聞の本 (講談社文庫)

そもそも、「ほぼ日刊イトイ新聞」とはなんぞや? という話はあるんだけど、それはキーワードリンクでもみてもらうとかして・・・

巻末でイトイさん本人も書いているけど、一口で言えば早すぎる社史。でもこれは、クリエイティブの食い扶持を探す物語、といったほうが内容が伝わるだろう。普通、独立自営で自分の才能を切り売りするような商売でも、結局は自分自身のお客様の顔色を伺いつつ、自分のやりたい方向というものを曲げるなりなんなりということになりがち。でも、「お客さま」に何を言われようが自分たちがイイと信じるモノを作ってご飯が食べられたらステキじゃないか? それをまあ、大仰な言い方すれば人生賭けてやっちゃったわけで。ものすごくカッコイイ話だと、思いました。はい。

んー、なんだろう。「こうだったらステキじゃん!」を実現しようとした人として、カストロとかホー・チ・ミンとか、まあ古くはキリストとか、そーゆー人を連想するのは、んー、買いかぶりすぎ? でも、そもそもの動機というか、共通するものを感じるんだよねえ。もちろんイトイさんは武力闘争なんかはしないわけだけど、これは自分の国を作るための独立闘争とも読める。面白いし、カッコイイです。久々にヒーロー登場という感じでした。

本を読んでいて、一番印象的だったのがソフトバンクの孫さんを引き合いに出したところ。孫さんの言葉として引用されたのは極短い言葉で、言葉ってのは短くすればするほど真意が伝わらなくなるケースが多いってのは、承知の上で書いてみる。イトイさんは本の中でこんなことを書いている。

たいした人だろうとは思うのだけれど、孫正義という人が「時価評価総額で日本一の企業を目指す」などというのを聞いても、それがなんのための目標なのか、まったくわからなかった。

ニュースとか、そーゆーもので伝えられる孫さんの言葉が少なかったり恣意的にフィルターされたものなのかもしれないけど、それでも、孫正義ソフトバンクが目指す世界がよくわからないというのは、指摘している通りだと思う。あんだけの金と巨大な組織があるんだ。金儲けばっかりしてないでビジョンを掲げてその実現に力を注いで欲しい。「こうなったらステキじゃん!」ってやつだ。ああ、自分の資産評価額のゼロが増えると確かにステキですね。
その点、ホリエモンはビジョンを掲げているだけマシだと思う。まー、株価維持の為のポーズという匂いはぬぐいきれないけど。でも、X PRIZEに金出したりしてるのはいいことですよ。どんな匂いがしても金は金だしね。

んー、なんか孫さんの「日本一」を見て、伊丹十三監督の「スーパーの女」を思い出した。「じゃあ、ウチは日本一お客様のことを考えるお店にしたらどうかしら!」というセリフがあったけど(たしか)、これだって立派なビジョンだ。フィクションの中の言葉だけど、上の孫さんの日本一と、どっちがステキだろう?