期待値・ペイオフ・収益性

魔術師たちの心理学 ― トレードで生計を立てる秘訣と心構え (ウィザード・ブックシリーズ)
これ読みやすい本で、あっという間に211ページまで読み進んだけど、よく理解できない部分が・・・ システムを比較する基準として期待値という概念が出てくる。1投資したとき、期待できるリターンを表す数値なんだけど、最初に出てくる式はこんな感じ。

(PW AW) - (PL AL)

これはまあ、理解できる。次にこれと等価だという次の式が登場する。

\sum _{i=1ton} (PWi AWi) - \sum _{i=1ton} (PLi ALi)

※PW=勝率、PL=負け率、AW=平均利益、AL=平均損失
まー、個々の期待値を合計したものが全体の期待値だという事を表現しているのは分かる。で、この次に登場する概念が「ペイオフ」というもので、これがどうもAW(平均利益)、AL(平均損失)と同じ概念だということらしい。
で、最初にサンプルシステムの評価の例で期待値を算出する所(201ページ)で飛躍がある。ペイオフとは

利益と損失を最小損失で割ると、ペイオフ(収益性)が出る。

と定義されている。これがどうやると平均利益(もしくは平均損失)になるのか、さっぱりわからない。更に、利益と損失を$500づつの幅でグループ分けして、そのうえでペイオフを求めている。そして極めつけはスクラッチ(損益なしのトレード)を除くという所なんだけど、だいたい$40に満たない損益を除いてペイオフと期待値を算出している。
このへんの恣意的な操作(としか思えない)が、一体どんな意味があるのか、みんな分かってるのかな? 私はさっぱり理解できませんでした。

・・・なんとなくだけど、元の表は単位が「$」で実際にとったポジションのサイズがどれぐらいだったのかが示されていない。私が自分のシステムの評価をやるときに使う手法は、最初に利益を(この本の200ページで「$」で示されているモノ)取ったポジションのサイズを1とした割合(パーセント)に変換してから算出している。この「$」ベースの表を同じように、元のポジションのサイズに照らしてどの程度の損益だったのかを求める為に、「仮のポジションのサイズ」として最小損失を基準値として使っている、ということなんではないだろうか? だとしたら、なんという誤魔化しだろう! 最初からトレードの結果を「$50儲かった」ではなく「ポジションに照らして5%儲かった」として計上すればこんな誤魔化しをする必要はないんだ。このへんはストリズマンの本*1の方が優れていると思う。

ストリズマンはシステムの評価を行う場合、資金管理戦略の評価を行う時だけ「$」を使い、他では必ず「%」を使うべきだと本の冒頭でイヤというほど繰り返している。これはドクター・タープのポジションサイジング(まだ読んでませんが)にも通じる話なんだけど、この期待値の算出方法は、ちょっとお粗末なんじゃないだろうか?

ドクター・タープの期待値算出方法でも「だいたいOK」になる理由がちょっとわかった。サンプルシステムの前提が「1単位売買」と置いてあるからだ。この1単位の値段が始めと終わりで100倍も違ったら、この期待値算出方法は破綻するだろうな。あるいは、価格の違う複数金融商品(まあ株でもいい)の売買をいっぺんに扱うこともできない。危険だw