絶対

24日の夜。トラブルの原因について急遽識者を集めて私のアイディアを説明、いろんな観点から叩いてもらって妥当性を評価。対応パッチについても方向性を打ち出して、さあ行こう! という段になって直属上司からこんな質問が。

この対策で、絶対大丈夫なんだよな?

もうなんか、たまらなくうんざりしてしまった。「絶対とはいえません。今の所一番有力な仮説です。」と言っても同じ質問で返される。しばらく押し問答してこっちががまんできずにキレてしまった。自分の席にもどってから爆発してしまい、アメの袋を床に叩きつけて臨時のどあめ拾い放題会場を店開き。この時、自分の憤りを説明するうまい言葉も見つからず、すぐ現場に入って対策しなければならなかったので、横において置いたわけだけど、まあ時間もできたし改めて考えてみようかなと。

どんな仕事でもそうだと思うけど、仕事としてやっているなら、常に最善を尽くしてやっていて、その時その時の判断というのは考えうる最善の判断を下している。この自分の努力に対しては絶対の自信があるけど、そうして下した判断が絶対に間違っていないかと言われても、そんなものはわからない。私は占い師でも神様でもないんだから、将来の予言なんてできない。数学や哲学的な真理なら「絶対」という言葉を使う事に何の問題もないわけだけど、コンピュータに係わる仕事は実証主義が基本なんだし、キレた状況で得られているのは「与えられた時間内で最高に知恵を絞って検討に検討を重ねたもっとも有力な仮説とそれに基づく対応策」であってまだテストさえしていない。それに絶対のお墨付きを、与えられるワケが無い。よしんば、十分なテストを繰り返したとしても、通常「絶対」なんていう言葉で品質を表現する事は無い。こんな事は実務を5年もやればわかる。オマエは品質評価報告書に自分の署名入りで「絶対大丈夫。」って書くのか?と。逆に言えば、今出てきた対策の、まだできてもいないテストの結果に「絶対大丈夫。」と書いて署名しろと言っているのと同じだ。

そーゆー、今遂行中の作業における「絶対」という言葉の持つ意味合いへの無理解が、まず一つキレポイントとしてあったな、と。

そしてもう一つ。私にとっての「絶対」という意味への無理解の他に、私に「絶対」の判断を押し付けようという無責任さというものもあったと思う。なんというか、トラブルでカンカンに怒っているお客様に対して極度におびえて、ありとあらゆる言葉を使って怒りを鎮めてもらおうとしているんだけど、その時「絶対」を口にしてしまう。その根拠として私の「絶対」という言質を使おうなんて気持ちが見えて、もーうんざり。えてして、その後またトラブルが起ったりするもんで、絶対の価値は大暴落。何をしても信用してもらえない事になる。そーゆー、自分にとって神にも等しい「絶対」という概念を、日常茶飯に使って絶対インフレを起こして信用を失墜させている事に、憤りを覚える。まあ、こっちも結局は「絶対」の価値に関する事柄だな。無理解とお粗末な扱い。これに頭にきてしまいましたよと。

なんだろうなー、どこのコンピュータ屋さんもそんなに簡単に「絶対」って使うのかな? もちろん経営職層、管理職層、技術職層それぞれで言葉の意味は変化するけど、まー、それにしても・・・ 納得がいかん!

自分の最高の努力の結果、出てきたモノの品質が相対的に劣るなら、それは評価としてバツを付けてもらって結構。性能が劣るわけだからね。でも、安易に絶対を連発して間違ったら「あいつの言う事はほんとかどうかわからん。」になるじゃないか。そんな評価を受け入れられるほど、出来た人間じゃないやい!