プログラマーのジレンマ

元々のタイトルは"Dreaming in Code"。帯の煽りはこうだ!

もうひとつの「人月の神話」
シリコンバレーを舞台に、
天才プログラマーのドリームチームが挑んだ
オープンソース開発プロジェクト「チャンドラー」
立ち塞がる難題、時間の壁、去り行く同志−−−
混迷する3年間に密着した長編ノンフィクション

面白かったです。ノンフィクションだからこその迫力と、ことが始まった時からの取材と書籍化故のグダグダ感が満載。このグダグダな所が嫌いだと、この本は楽しめないと思う。でも、「まったく新しいソフトを作るぜ!」っていうプロジェクトがどんな歩みを進めるのか、そーゆーものの貴重な記録だと思う。ものすごいスターが次から次と集まって、働いて、去っていく。「3年」っていう期間の重さが感じられる話だった。

ソフトウェア開発が好きで、シリコンバレーに憧れちゃう!って人は読んでおいていい本だと思う。ソフトウェア工学における「常識」と、プロジェクトの渦中にある時の心の状態や、今この世のどこにも存在しない新しいモノを作るとはどーゆー事か、ソフトウェア技術者がもう50年も見続けていまだ果たせない夢について。それぞれ読んでいて面白い話だった。だったんだけど、構成がイマイチだったかなー。業界のお話と、開発プロジェクトの状況が、あっちに行ったりこっちに行ったり、全体として散漫な感じは否めない。特に、開発の物語は2005年、チャンドラー0.6のリリースで終了してしまうのでそこは不満が残る。

プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間

プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間

でもまあ、かなりリアルタイムに近い話で、「その後」が知りたければ、ちょっとググってチャンドラーをDLすれば、いったい何を作っていたのかを目にして、実際に試すことができるのはいい。

チャンドラーにとって不幸だったのは、Googleの存在だ。GmailGoogle Calenderが世界を先に征してしまった。チャンドラーそのものは、PDAとうまく連携できたら、最高のソフトウェアだと思う。でもやっぱり、同期する為のハブが必要だ。いっそあれだ、Googleに買ってもらうとか、Amazonなんかのクラウド上で同期の為のサーバをサービスしたら面白いんじゃないかな。あとは「デスクトップにインストールする」っていうのをヤメて、Web上のサービスにしちゃえばいいんですよ、デスクトップの機能も(UIだけはPCに置いて、それ以外はAPI化してサーバに置いちゃう)。それでiPhoneなんかから使えたらもう最高なんだけどなw

wikipedia:Chandler_(ソフトウェア)
Chandler Project - Welcome

アイコンが犬というのは、この本を読んでいたので「あーなるほどねw」という感じ。みんな犬好きなんだなw

あとまあ、この本読んで思ったけど、スターとか天才とか呼ばれる人が10人集まってもダメだな。天才はせいぜい2人にして、凡人を8人つけた方がいい。みんなが俺様だとプロジェクトは迷走する。リーナスみたいに、終身独裁者みたいなのが強烈に意思決定して、みんながそれに従うヒエラルキーがあれば、プロジェクトは制御可能だ。幸いにして今の部署は意思決定の権限が誰にあるのか明確になっているので、惑うことは少ない… はずなんだけど、その下についている人たちが全員違う方向向いたりするとダメになる。リーダーシップ、かなあ。一つのカギは。