BILLY BATと下山事件

ほんとはもっと前から書こう書こうと思っていたんだけど、なかなか書き出すことができなくて今日まで来たけど、モーニングの表紙が素晴らしかったので、思い切って書いてみることにする。

年明けぐらいからかな。浦沢直樹の新連載がモーニングで始まった。タイトルはBILLY BAT。舞台は終戦間もなく、GHQに支配されていた日本が舞台。なんだかよくわからないまま物語は進んで、4話目ぐらいだったかな。初代国鉄総裁が轢死体で発見される場面が描かれた。下山事件の話だと、やっとここでわかる。まったくもって長い仕込みだ。

下山事件。私もこの回を読んだ当時よくは知らなかった。ただ、戦後間もなく起こったかなり異常な事件だったということだけは知っていた。この事件を調べたらもっとBILLY BATの面白みがわかるに違いない! と思って、本屋さんに置いてあった「下山事件」というそのまんまのタイトルの文庫を購入。読み始める。

下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫)

下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫)

これがものすごく面白かった。「戦後」という時代の空気というか、どんな時代だったのか、その空気感が、うっすらとだけど感じられる。そしてそれが紛れもない事実として存在して、今の日本につながっている。自分がいかにいろいろな事を知らないか、ということを実感した本だった。

とにかく、深い。ものすごく深い闇が延々と続くような事件だ。たぶん、「本当の所」というやつは、もう二度と知ることはできない。でも、謀略が実行されたという事は、きっと間違いない。GHQ内部の権力闘争、共産国と米国の暗闘、旧軍関係機関の暗躍、政治家の世論誘導工作、実行者達の残虐さと欲望、国鉄民営化を自分の利益にしようとする旧財閥。数え上げればキリがない。闇に目をこらしても、はっきりと焦点を合わせることはできないが、慣れてきた目には、うすぼんやりとした何かが見える。

森達也の「下山事件」は2周目をあと数時間で読み終わるところだ。そんな状態で読んだ今週のBILLY BATは面白かった。主人公ケヴィンが連れ込まれたビルの名前、そこにいた人物が誰なのか、ぼんやりと想像がつく。時々SFみたいなギミックを入れたりしているけど(今週のラストとかw)これは下山事件の独自の解釈を加えた新しい仮説を、ふわーんとフォーカスをぼかしながら展開していく作品なんだろうな。来週どうなるのかちょっと予想がつかない感じになったけど、今後も楽しみな作品です。

あと、森達也と同じ時期に共同取材をしていた人たちの違う本も2冊でている。こっちもちょっと読んでみたい。まあ、これも今後のお楽しみだ。

下山事件―最後の証言

下山事件―最後の証言

葬られた夏―追跡下山事件 (朝日文庫 (も14-1))

葬られた夏―追跡下山事件 (朝日文庫 (も14-1))