UOKRでEAがやりたかったやろうとしていること

ちょっとUOKRクライアントを入れて、なんだか不満というところと、ここはいいなという所と両面だったんだけど、専門家とかおだてられたのでwこれはEAとしては、どうしたかったのか考えてみることにした。クライアントソフトそのものが、どう、という話の前に、EA自体がこの事業をどうしたいと考えているのか妄想するところから入ろうと思う。その全体的な流れの中に、UOKRクライアントの向かう方向を確認する、という感じで。

EAがUO事業を維持していく上での課題と、対策としてのUOKRがどーゆーものなのかちょっと妄想してみる。

ソフトウェア保守工数の削減

2Dと3D二本立ての保守が問題になっている。二本立てにかかるコストに見合った効果がない。

結局UOTDで3Dクライアントを導入して、その時も最終的には3Dクライアントに完全移行するのが目標だったと思う。でも、あの3Dクライアントの品質はお世辞にもいいと言えるものじゃなかったし、全くプレイヤーの支持を得られなかった(と言い切る!)。やむなしで両方の保守を続けてきたけど、10周年を機会に事業全体の見直しが必要になったんじゃないかな。で、どんな経営者でもひとつの世界を見るのに2つのクライアントがありますなんてのは異常な事態だと思うでしょう。そこに手をつけて、ここ何年かの中長期計画として、クライアントソフトの一本化が事業計画として盛り込まれたんだと思う。単純計算でコスト半分だもんね。特にテストに必要な工数を圧縮できるのが、現場の負担を軽減することに繋がると思う。

2D保守に必要な人的資源の調達が困難。業界全体が3D技術に移行しつつあるので2Dグラフィックスコンテンツの保守が難しくなっている。

最近ヨソにTB送ったけど、同じような話があった。2Dで表現されたゲームが少なくなっているという話。これは業界全体が3D技術基盤に移行してきていて、2D技術が維持できなくなってきたという背景があると思う。実際、今の2Dクライアントにしても、新しいコンテンツ(クリーチャーなりアイテムなり)を追加する時は3Dクライアントでレンダリングしたオブジェクトを2Dのスケールに合わせて2D画像として使いまわす、なんてやり方をしてたり。このやり方だと、2Dの画面ですごく「浮いて」見える。そもそもデザインポリシが違うんだからそれを一画面に収めたら、そりゃヘンになりますよと。これは3Dクライアントについても同じで、背景は2Dのを流用してるんだけど、オブジェクトは3Dレンダリングしたやつで、これも浮きまくっていた。
この異なるデザインポリシの混在によってグラフィック全体の整合性が破綻しちゃったって問題を、UOKRを入れてすべてのコンテンツのデザインをやり直して再統一しよう、というのが今回の試みなんじゃないのかな。

あと、「2Dの保守が難しい」というのには、今の2Dクライアントがもう10年も前の設計のものを保守・維持してきたので、大きな基本設計のところで限界がきていたんじゃないかと、思う。これはちょっと後述。

UOProの存在が保守の困難さを助長している。本来一体となって機能するプログラムであるにもかかわらず管理外である為、バグ対応や機能の追加・廃止が難しい。

保守をやってる人にとっては、これはものすごくイヤな状態だと思う。内部でコントロールできないモノなのに、協調して動く必要がある。テストとかの工数を誰が負担するのか? EAにとっては全く理不尽な話だ。今回UOKRでマクロを大きく拡張したのは、この問題にケリをつける、一番の方法だと思う。TagSoftとしては結構お金を稼いだと思うんだけど、どうしたのかな。EAにソースコード買い上げてもらうとか、なんか金銭的な取引があったんだと思うけど、どーなんだろ。

ちょっと加筆。下でXboxでの展開が目標と書いたけど、それを前提としてUOProの問題を見直してみると納得。Xbox使ってる人にUOA入れさせるわけには行かない。PCユーザと同じユーザビリティを実現する為に、その機能をクライアントソフト内部に取り込んだ、ということじゃないのかな。

チート対策が必要だが、UOProとの兼ね合いもある為対策が難しい。UOAと連動するタイプのツールは事実上対策困難。UOAがUOセキュリティホールになってしまっている。

PunkBuster導入の是非とかあって、いろいろ揉めているけど、チート対策は必要だ。でもUOAがあることでそこを踏み台にしたマクロ制御とかやられたら、これはどうもならんなと。UOA自体は管理外だし。なのでUOAを機能として取り込んで、UOの環境全体を、EA内部で管理できるソースコードで固めようということなんだろうな。UOAMチックな機能が実装されているのもこの流れの一環だと思う。
あと、ルートに関しても自動ルートにしようかどうしようかという議論があるのは、不正に出回っている自動ルート対策なんじゃないかな。考え方だけど、不正がなぜ不正なのかというと、機会均等の原則を壊すからだと思う。チートツールを使っている人と、使っていない人でユーザビリティが大きく異なると、それは意図されたゲームデザインと違いますねと。なので、自動ルートを認めてしまって、自動ルートを前提としてゲームそのものを再設計したらいいんじゃない? という考えもあると思う。
個人的には、UOはあの不便なルートがあるから面白いと思うんだけどね。Pスキルが問われる部分。他のゲームにはない面白さ、ゲーム性だと思うので、自動ルートには反対だな。

同業他社との差別化

UOを特徴づけるのはプレイヤー参加型のイベント。これを推進してく為にGM、カウンセラー、プレイヤーコミュニティへの支援を強化する必要あり。より多くの投資が必要。

まあ、何をやるにもお金が必要。なので、このサービス展開の為の原資としてソフトウェア保守工数を削減して、削減分を充当すると。その為にクライアントの一本化や保守の効率性UPの為のいろんな事をやろうとしているんだと思う。

イベント支援の為にはゲーム内に目に見えるオブジェクトを設置する(ジュカ侵攻イベントとかでコントロールタワーやらYewの腐った木やらあった)事が多いが、今のソフトウェア保守にかかるコストを考えるとおのずと限界がある。

これは、新しいコンテンツを追加するのにかかるコストが大きい、という話。本来3Dクライアント導入ってこの問題を解決するのが目的だったと思うんだよね。2Dクライアントでは既存のタイルパターンの組み合わせで、巨大な建築物なんかを表現したりするんだけど、このパターンで表現するのもそろそろ限界なんじゃないかと。実際結構ムリヤリで、正直言ってしょぼいものも多かったと思う。3Dならオブジェクトモデルをかなりコンパクトにして扱う事ができるからパッチとしてリリースするのも難しくない。デザイナーも自由度が大きいし、いろんな事ができる。実際、昔日本でデザインが募集された服(フラワーガーランドとかさ)なんか未だに2Dじゃフィールド上でちゃんと表示されないよね? 3Dなら見えたはずなんだけど。UOKRだと、どうなんだろ・・・

まあ、それでも新しいタイルパターンをどんどん追加していってイルのダンジョンとか、Doomなんかもなんとか表現してきた。でもあのタイルパターンの登録数も上限があって、これがそろそろパンクするんじゃないの?と。なにしろこのタイルパターンでフィールドを表現するシステムの基本設計が10年も前なんだ。当時1997年。クライアントPCのメインメモリは64MBとかの時代ですよ。なので、当時の設計限界は、かなり小さかったと、今の基準で思う。それが度重なる拡張で、もうそろそろパンクなんじゃないかなと。そこでクライアントで扱えるフィールドパターンの上限を拡張しつつ、今の2Dクライアントとの互換性も維持するような仕組みを作ったんじゃないのかな。UOKRで見るフィールドはすごくキレイになっていて、このパターンは今後簡単に追加できるようになっているんだと思う。2Dでは、真っ白い馬に見えるユニコやオスタに見える沼ドラみたいな感じで代替する絵が表示されて、それはそれで破綻なく見える、ような感じで。

こーゆー「コンテンツ追加が比較的容易にできる基盤整備」という側面がUOKRにはあるんだと思う。それは3Dクライアントでできなかった事を改めてまじめに取り組もう、ということだと。なので3Dでコテンパンに言われ続けてきた「PDがダメ」というのを本気で直したのがあのPDなんじゃないかな。

同業他社からの顧客の取り込み

UOのUIが、他のMMORPGユーザから見たとき「特異」である。すべてがオブジェクトで表現されている故に「世界に直接触れる感覚」があるのが特徴ではあるけど、オブジェクトと背景を見分けるPスキルがない場合、何が使えるオブジェクトなのか分かりにくい。→他のゲームで採用されているメニューシステム導入によってその敷居を下げる。

私がやった事がある他のゲームって、実はほとんど無くて、FFXIと、あとDWANGO+SQENのヤツ(名前忘れた;;)。どっちも、メニューを使ったUIで、ゲーム機で実装するUIに近い感じだったと思う。あの世界から来ると、UOのUIはわからないだろうなーと。
あー、書いていて気づいた。「ゲーム機で実装するUIに近い」ってことはあれだ、ゲーム機への展開が可能になったってことだ。Xboxとか、いけるんじゃないの? そうでもしないとパイが大きくならないからな。ターゲットシステムがマウスでなくても機能するようになったのも、コレが目的なんだろうな。

伝統的2Dグラフィックスが、10年続いているという看板と合体したとき、それは「伝統的」ではなく「時代遅れ」と映ってしまう。大幅に近代的なグラフィックデザインへ刷新し、新規プレイヤーにアピールする必要がある。

これはグラフィックデザインのポリシーの話だけど、良くも悪くもやっぱり今の2Dのあの絵は古臭くなっちゃったんだと思う。アイテムやクリーチャを追加してやってきたけど、ここで一発バンと刷新するんだと。大きな花火打ち上げないとキャンペーンもはれないしね。そーゆー「アピールの為の機会」という側面があると思う。でも、本当にやりたいのは上で書いた「コンテンツ追加が比較的容易にできる基盤整備」ということなんだと思うけど。

・・・んー、やっぱ違うな。主たる目的はゲーム機での展開なんだ。今のPC用2Dクライアントの絵のまま展開するのは難しい。見劣りがしないグラフィックデザインを新たに作り直して、それをXbox-PC共通基盤であるUOKRクライアントに乗せましたと。アピールする対象は、事見た目に関しては目の肥えたいまどきのゲーム機ユーザだ。今の2Dのアレでは、ましてや3Dのアレでは無理がある。じゃあ、あのUOKRはというと。んー、まあ、2D、3Dよりはマシじゃないのかな。

で、問われるのは今の2Dのグラフィックデザインと、UOKRのグラフィックデザインでどっちが「いい」かって事なんだと思う。良さってのはなかなか絶対的な指標はなくて、立ち位置によってまったく意見がちがったりするのですごく難しい話だと思うけど、まあ、思ったことを書こう。

現在の顧客の囲い込み

従来の2Dクライアントを維持することで、今の顧客をつなぎとめる。2Dユーザがいなくなったら(それがKRクライアントの品質向上によってそちらに移るか、他のゲームに移るかはさておき)UOKRクライアントに一本化→ソフトウェア保守工数削減。

Xboxでの展開を視野に入れているとしたら、EAとしてはXboxで売れれば、PCなんてメじゃないと思ってるんじゃないだろうか。PCの人も、よければいてくださいね、というか。基盤としてXbox+UOKRがあるから、PCの人たちはXboxかってちょうだい、ぐらい考えてるのかも。
まあ、いずれにしろ、UOの魅力は、多分今も活発なプレイヤーコミュニティにある。これがあるうちに「これだけ活発なコミュニティとプレイヤーサポートの実績があるのはUOだけ!」という展開をしていくんじゃないかな。今のPCプレイヤーをどれぐらい大事にしていくか、というのは、2Dクライアントをどこまで維持するか、という事に現れてくるんじゃないかと。

結論 EAにとってUOKRとは

  1. UOKRとは、10年間培ってきたオンラインゲームサポートのノウハウと多くのプレイヤーコミュニティを伴って「新たに展開する」Xbox 360用のMMORPG UOSAのPCとの共通基盤。
  2. 従来のUOプレイヤーはUOKRを通じてそれと意識させずにUOSAという新しいゲームに順次移行させるという野心的な試み。

というところかな。下のコメントで「2Dベースで保守を続けられなかったのか?」という疑問が呈されているけど、技術的には、もちろん可能だし、経営がそれがいいと判断すれば、現場はただそれを粛々とやるだけだと思う。今回大きくグラフィックスとUIが刷新されるのは経営上の判断があったからで、技術的な問題じゃない。その目標はXboxで展開することで、パイを大きくしてうまうましよう、という、まあある意味当たり前の判断が、あったんじゃないかな。

あ、んー、ゲーム機で展開するにはどうしてもゲームコントローラでルートさせるしかないじゃないか。やっぱりルートは自動ルート実装してくるのかな。PvPエリアだけ手動ルートで、Tルールの所は自動ルートにして、PvPやる人はマウスつないでね♥とか?

まあ、すべては妄想の産物ですがw